いちとはぎの新婚生活


by clemenskrauss
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f0022130_0524649.jpg古代ギリシアの悲劇作家ソポクレスの代表作。
言わずと知れた物語ですが、こうして改めて読んでみるとその強烈で無駄と迷いのない話の展開に釘付けになります。また、アリストテレスの「詩学」を元に分析するなど解説も充実しており、1粒で2度美味しくなっています。

以下、まとまりのない感想文。

解説では同じオイディプス王の悲劇を取り上げたソポクレスとアイスキュロス、エウリピデスとを比較しているのがなかなか興味深いところです。ソポクレスが散逸せずに残っているのに対し、アイスキュロスとエウリピデスはすでに失われてしまっているわけですが、アイスキュロスの場合同じ三部作として書かれた「テバイ攻めの7将」が残っており、ここからオイディプス王の描かれ方が類推できるようです。
それによると、アイスキュロスが神託を無視したオイディプスの父ライオスに対する、アポロンの呪いによる不幸の連鎖として描いているらしいのに対し、ソポクレスはオイディプス自身を初めとする人間が、良かれと思って行った一つ一つの行為の積み重ねの結果としての悲劇であると。当然簡単に優劣をつけることはできないけれども、人間のドラマとして描かれているからこそ作品に生命力や力強さが生まれているのかもしれない。

アリストテレスによると悲劇において最も重要な素因は出来事の構成にあるそうで、「逆転」「発見」「恐れ・あわれみ・いたましさ」を要素として挙げています。筋の「逆転」が先立つ出来事との因果関係があること。真実の「発見」が無理のない驚愕とともに出来事の結果としてもたらされるものであること。さらにこれら「逆転」と「発見」が同時に起こる場合が最も優れていると述べており、例としてソポクレスのオイディプス王を挙げています。なるほど、確かにオイディプス王においては恐るべき真実の「発見」により「逆転」が発生していますね。しかも、真実が善意からもたらされるというのも大変効果的です。

また、「恐れ・あわれみ」と呼び起こすための人物の設定として、特別に優れた人でも邪悪さのために不幸になるのでもなく、ただある過ちのために不幸に陥るような人であり、名声と幸運のうちにある人物であるべきだと述べており、やはり例としてオイディプスを挙げています。

更にアリストテレスは、恐ろしい行為が近親者同士の間で行われる場合の方が、敵同士や他人同士の間で行われるよりも「あわれみ」を呼びやすいと指摘したうえで、(a)この行為が近親関係を知りつつ意識的になされるか、(b)それと知らずになされるか、(c)果たされるか、(d)果たされないかといった条件の組み合わせごとに比較し、オイディプス王のような(b)+(c)のケースを高く評価しているとの事。
ただ興味深いのが、この意味でアリストテレスが一番高く評価しているのが(b)+(d)のケースで、エウリピデスの「タウリケのイピゲネイア」を例に挙げているのだとか。イピゲネイアといえばアガメムノンの娘でエレクトラ・オレステスの姉。これは一度読んでみたいなぁ。

イチ
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by clemenskrauss | 2008-04-25 00:47 | 積読日誌

プラトン初期の対話編の一つ、ラケス。恥ずかしながら某古本屋で手にするまで題名すら知らなかったのですが、とても面白く読めました。

年頃の息子を持つリュシマコスとメレシアスは、偉大な父親を持ちながらも自らがその資質を十分に受け継ぐことができなかったことを大変悔やみ、国政にかまけ息子の教育に十分に力を注ぐことのできなかった父親たちの失敗を繰り返さぬよう、息子達にはしっかりとした教育を受けさせたいと思っています。
重装武闘術こそが若い男性が学ぶのに良いと人から勧められた二人は、ラケスとニキアスと言うアテネの高名な将軍を招いて相談をするのだけど、ニキアスは息子達に学ばせることを積極的に勧めたもののラケスは何の役にも立たないと意見が割れてしまう。そこに登場するのがソクラテスと言うわけなのですね。

ソクラテスの登場をもって、リュシマコスとメレシアスの息子はどこかへ忘れ去られてしまうのですが(笑) 彼はリュシマコスやメレシアスの相談について、果たしてここにいる誰かが何らかの助言を与えるに相応しい人間であるのかを、対話を通して吟味していくことになります。
解説にもあるけれど、「あるもの(A)が別のあるもの(B)に生じれば、Bをよりすぐれたものにすることを我々が知っており、かつAをBに生じさせることができるとき、我々はどのようにすれば人がAをもっとも容易かつすぐれた仕方で獲得できるかについて助言すべきその当の対象、すなわちAが何であるかを知っている」必要があると。つまりは魚を使って美味しい料理を作るには、魚博士じゃなくって料理人であるべき、てことでしょか。リュシマコス氏の教育問題に話を戻すと、Aに「徳」、Bに「心」を入れると理解しやすそうです。

「息子達に教育を通じて徳を身に付けさせるための助言を与えるには、最低限徳とは何であるかを言えないとネ!」というソクラテスの発言に乗ったラケスとニキアスは対話を通じて否定され一同は行き詰ってしまい、最後に「若者達だけじゃなくて、ボクらも学んで成長しないとネ!」でまるく収まるのですが、その過程がなかなか面白い。この薄い本の、更にその半分が訳注と解説で占められているような分量にもかかわらず、考えさせられたりニヤッとさせられます。


しかしまあ、ソクラテスさんも普段からこんな感じじゃ嫌われるよなぁ。幸いにしてこの話の登場人物からは(プラトンの描写によると)一目置かれているけれども。
こんな人に今夜の夕飯についてうっかり相談しちゃったりしたら大変だろうなぁ。と、焼酎を飲みながら改めて読み返して、ものすごく俗なことを考えてみたり。

イチ
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by clemenskrauss | 2007-11-14 22:58 | 積読日誌
興味のある分野のお気軽な読み物として、割と好きだったりするNHKのラジオ講座のテキスト。今度は古代ギリシアについて。

本を読む上で最近の自分の興味は主にローマ時代にあって、古代ギリシアへの興味もそこから派生したもの。ローマの共和政期・帝政期の上流階級の人々からすると、ギリシアは落ちぶれたりとはいえある意味江戸時代の京都みたいなもので(かなり違うか(笑))常に憧れとコンプレックスがあったわけですね。まあ、なんせホメロスがイリアスで神々と英雄達の生と死を謡っていた頃、ロムルスとレムスはオオカミの乳を飲んでいた訳ですから。
とにかく、あれほど栄華を誇ったローマ人が憧れ続けたギリシアについて、もうちょっと色々読んでみたいと思っている今日この頃なわけです。

全13回のラジオ放送用のテキストなので、古代オリンピックから神話やイソップ寓話、日本におけるギリシア観、民主主義、哲学など話題も多岐に渡っているのですが、中でも興味深いのが、ギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスの作品について綴られた章。
アンゲロプロスは名前だけは知っているもののその作品は全く見たことが無いのですが、ここで紹介されている「旅芸人の記録」は是非一度観てみたい。旅芸人の一座の視点から、第二次世界大戦前後のギリシア現代史を語るような内容らしいのだけど、その旅芸人の一家の名前にアトレウス家、つまりギリシア悲劇のオレステイア三部作に登場する一家の名が付けられているのだ。もう、この事実一点だけでもこの映画の持つ重い内容を想像するには十分かもしれない。

イチ
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by clemenskrauss | 2007-11-05 23:59 | 積読日誌
随分前(夏前?)に読了したのだけど、記事を書きかけのまま放置してました。

ホメロス作と言われる壮大な叙事詩、イリアス。独特の語り口や登場人物の多さ(しかもその多くが登場した次の行には英雄達に倒されてしまう)にさえ慣れてしまえば、寝不足な日々が続いてしまいます。
(そういえば、先日訳者の松原千秋さんが亡くなりましたね。合掌)


ところで、この世界をコンピューターゲームにしたら面白そうなんだけど、どうでしょ。だいぶマニアックになりそうだけど。
プレイヤーは数多い英雄の中からキャラクターを選択し、史実通りにアカイア勢を勝利に導くか、トロイア勢で歴史を変えることを目指す。各々の名前の前に「大音声の誉れ高き」とか「神に見まごう」とか「俊足の」という称号が付いていて、それぞの特質を生かした戦いをすることができる。
気まぐれな神々に祈ったりお供え物をしたりすると、遠矢のアポロンが相手の矢をはじいてくれたり、軍神アレスあたりが力を貸してくれたり。不幸にして味方の英雄が倒されてしまった場合、敵に武器や防具を奪われてしまったり、遺体を傷つけられたりしてしまうと士気にかかわるので、全力で守らなければならないとか。
敵から奪った武具を身に着ける際には、そのアイテムが自分の出自に相応しいものかを見極めなくてはならない。ヘパイストスの手による武具などは、神の血が流れていないヘクトルのような英雄が身に着けてしまうと神々から顰蹙を受けてしまい、命取りになりかねないので要注意。そのほか、軍議の場で大喧嘩して味方の武将が参戦してくれなくなるイベントも。


クリア後は神々を選択してプレイするオリンポスモードも完備。天変地異を起こしたり、英雄達に力を授けたり・・・って、これまんまポピュラスですか?

イチ
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by clemenskrauss | 2006-09-03 22:53 | 積読日誌