いちとはぎの新婚生活


by clemenskrauss
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

タグ:ローマ ( 3 ) タグの人気記事

f0022130_22593476.gif老年について
著:キケロー
訳:中務哲郎
岩波文庫


カエサルと同時代を生きた政治家で著作家キケロ晩年の作品。一般に忌むべきものとされている老年について、ポエニ戦争の立役者大カトーの口を借りて謳いあげる一冊。

登場人物は大カトー、大スキピオの孫で後にカルタゴを滅ぼす小スキピオ、小スキピオの友人ラエリウス。ギリシア譲りの対話形式で書かれているけれど、プラトンのように問答を積み重ねるようなものではなく、若いスキピオとラエリウスに対して齢80を超えた老カトーが老年の素晴らしさを一方的に語るといったもの。本書において二人の青年の存在はまったく副次的なものであるといってよく、大カトーの口を借りてキケロ自身が「こうありたい自分の老後」を綴ったものといえる。

キケロよりは一世紀前に元老院を主導してローマを地中海の覇者とし、カルタゴを破った英雄スキピオ・アフリカヌスが元老院に派閥を形成しようとすると見ると共和政の危機とばかりにこれを失脚させ、晩年に至るまで政治的な影響力を持ち続けた大カトー。作品中ではローマ人らしく政務の傍ら農園の管理にいそしみ、またギリシア文学に打ち込んだと描かれている。
一方、元老院ひいては共和制の守護者を自任しまた周囲からも扱われていたキケロだけれど、『老年について』を執筆したのはカエサルが終身独裁官に就任し、政治的影響力が低下しイジケて執筆活動に打ち込んでいた頃。60歳を過ぎ老いの足音を感じていた彼が、尊敬する大カトーの口を借りて鬱屈した思いを著作にぶつけたくなった気持ちも分からないではありません。

キケロの著作は以前からちょっと興味があったのだけど、実際に手にしてみたら思ったよりも読みやすかったので、他のものも機会があったら手にしてみたいと思う。

イチ
[PR]
by clemenskrauss | 2008-11-14 00:15 | 積読日誌
f0022130_0551225.jpgローマから日本が見える
著:塩野七生
集英社文庫


追っかけている塩野さんの新刊。集英社というのがちょっと意外。

題名の通り古代ローマのありかたを通して日本のありようやあるべき姿を描く部分もあるのだけど、基本的には王政から帝政初期までの塩野さん流の通史というか、『ローマ人の物語』のダイジェスト版といった感じ。ダイジェスト版といってもさすがにつぼを押さえたもので、ローマについての予備知識の無い人にとっては手頃なガイドブックになるだろうし、一通り読んできたつもりの自分にとってもおさらいにちょうど良かった

本書の中でオリジナルな内容なのが書名にもなっている最終章の「ローマから日本が見える」と付録の「英雄たちの通信簿」。特に最終章で日本の55年体制時の自民党をローマの元老院に比しているのはユニークで面白い。
同じく最終章で述べている「日本人だからローマ史が分かる」というのも一理あるんだろうなぁ。確かに「グラディエイター」での帝政ローマの描き方(カリグラをモデルにしているんだっけか)や「スターウォーズ」シリーズでの元老院や共和制と帝政との描き方を見ると、映画としての出来不出来は抜きとして、作り手にローマ時代についての公正な見方をしているとはあまり思えない。そういう意味で、キリスト教徒から見た異教徒としての一方的なローマ史観だったり、共和制に民主主義を見る盲目的な民主主義者的な観点から、比較的にしても自由でいられる環境にある人間のほうが、より素直にローマを知り学ぶことが出来るのかもしれない。

イチ
[PR]
by clemenskrauss | 2008-11-10 22:59 | 積読日誌
f0022130_012423.jpg 昨年くらいに読んだ本だけれど、ここしばらく寝込んでいる間に改めて読み直しました。

イタリア・ヴェスヴィオ火山の栄えた地方都市、ポンペイ。紀元79年8月24日の朝方から起こったヴェスヴィオ火山の大噴火によって、一夜にして火山灰と噴石によって地中に没したこの街の、建物の壁に刻まれた落書き(や広告・ポスターの類)を分類しさまざまな角度から分析し紹介してくれる一冊。

発掘されたポンペイの壁に刻まれた文字には色々な性格のものが存在している。例えば、選挙においてとある候補者への投票を呼びかけるもの。
「C=クスピウス=パンサを造営委員として金細工師一同は推薦する」などと、当時既に同業者による組合組織が存在し、それぞれ後援する候補者への投票を呼びかけているというのが面白い。こうした選挙ポスターが、2000年近く時を経た今なお残っているものだけで1000以上発見されているという。

もちろん遺された落書きはお堅いモノばかりではなくて、誰かへの罵りの言葉だったり、片思いの相手だったりするわけで、古代ローマの市井の人々の生の声が、彼ら自身の筆跡がわかる状態で残されているというのは、ちょっと言葉では言い表せないくらいロマンを感じるし興奮させられる。

中には情熱的な愛の言葉だったり、世の中を斜めに見ているようなひねくれた格言めいた言葉だったり(ちょっとカルミナ・ブラーナを思い起こす)、ホラティウスやホメロスなどの詩の一節を引用したものやもじったもの、果ては人気剣闘士の星取表だったりと、内容も多岐に渡っており、当時の市民生活の多様さと同時に識字率の高さをうかがわせる。

新書なので仕方がないのだけど、惜しむらくは実際の落書きの筆跡を実際に見られる写真例が少ないこと。今度もっと深く突っ込んだ本を手にしてみたい。

一昨年の11月に新婚旅行の途中ポンペイにも立ち寄ったのだけど、残念ながらそのときは壁の落書きには気がつかなかった。(保存のため観光客が気軽に立ち寄るところにはないのかもしれないけれど)もう一度訪れることがあれば、じっくり自由に歩き回りたいなぁ。

ある程度じっくり読んでも半日で読むことのできるお手軽なものなので、古代ローマに興味のある方は是非。

イチ
[PR]
by clemenskrauss | 2007-06-29 00:02 | 積読日誌