いちとはぎの新婚生活


by clemenskrauss
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タグ:杉浦日向子 ( 5 ) タグの人気記事

f0022130_1414100.jpg杉浦日向子の著作が続きます。
この本は彼女の明治初頭を舞台にした作品を集めた一冊。

珍しく外国人を主人公とした「東のエデン」もいいけれど、元は身分の違う若き学生達を描いた「閑中忙あり」の連作が良い。「百日紅」や「百物語」ほどの独創性は無いものの、登場人物たちの魅力で読ませます。

しかし、この人の作品いずれにも言えることなのだけど、この魅力的な登場人物たちをもっと見たいと願っても果たされない事の虚しさを感じてしまうんですよね。
いや、魅力的な登場人物と書いたけれど、これは正確じゃないかもしれない。登場人物たちの魅力をもっと引き出せるのびしろがあるのに、と思わせると言うか、まだまだこれから面白くなるところなのに・・・と思わせると言うか。

最後に描かれた後日譚ならぬ前日譚で、古い日本画に反発して師匠の元から去り車夫となった妹尾が、異人のやりかたに違和感を感じつつも西洋画に惹かれていく姿と、海の彼方を眺めて言う最後の台詞「ヨーソロ ニッポン」がなんとも言えずに良いです。

イチ
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by clemenskrauss | 2008-02-14 23:52 | 積読日誌
f0022130_119591.jpg杉浦日向子の著作。様々な雑誌に書いたものを集めたものなので、玉石混交といった感じではあります。
正直前半は石勝ちでこれはちょっと失敗かなとも思ったのだけど、四章の私の江戸散歩、伍章のお江戸珍奇、六章の江戸本を読むあたりはとても面白いです。

中でも江戸珍奇では怪異やら男色やら呪術やら、下世話な話のごった煮といったところですが、日向子さんの筆も急に鮮やかになるようで面白い。
それにしても、ここで触れられている源内先生の男色モノの本、題名だけでもものすごいですわ・・・

そうそう、余談ですが、まるで『百日紅』の描かれなかった最終回のような『<創作>北斎とお栄』も載っています。

イチ
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by clemenskrauss | 2008-02-02 23:19 | 積読日誌
f0022130_0495899.jpg先日の『百日紅』に続いて、杉浦日向子の『ニッポニア・ニッポン』。

1983年から84年にかけて、あちこちの雑誌に書かれた短編を集めた一冊。もともと一冊にまとめる事を意図していなかったであろうものなので、悪く言えば寄せ集めといった感じも無きにしも非ずといった感じではあるのですが、いずれも杉浦日向子独得の世界観が生かされ、楽しめる作品となっています。

自分が特に気に入ったのは、高橋阿伝の最期と後日譚を幻想的に描いた『夢幻法師』、貧乏町学者と女装の麗人(?)、三味線の名手でもある旗本の末っ子という風変わりな3人組を描いた『馬の耳に風』『月夜の宴』『冥府の花嫁』、読後感の暖かな『安らかな日々』。

それにしても、杉浦日向子がもうちょっと仕事熱心だったら!(笑)
きっと健康面などで思うに任せなかったこともあったのでしょうが、『馬の耳に風』の3人組の活躍をもうちょっと見てみたかった。まぁ、きっとこのあたりのお話が後の『百日紅』の北斎とその周辺のお話に昇華して行ったのだと思うのですが。

『百日紅』『百物語』あたりを読んで気に入られた方は、是非手に取ってみてください。
好きな方には、オススメ。

イチ
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by clemenskrauss | 2008-01-29 23:54 | 積読日誌
f0022130_1204848.jpg江戸時代の絵師葛飾北斎と娘お栄、そして居候の善次郎(後の渓斎英泉)らの日常を描いた短編集。江戸の華たる火事に喧嘩は言うに及ばず、笑いあり、怪談あり、艶あり、心中ありの三十篇。

杉浦日向子さんの本はエッセイ調のものはいろいろと読んでいたのだけど、もともと彼女が世に出るきっかけとなった漫画はこれが初めて。本屋で手にしてちらっとめくってみたことはあるものの絵がイマイチ好きになれず、そのうちには読みたいと思いつつもあんまり興味を抱かなかったんですね。
ところが年末たまたま職場近くの古本屋を覗いてみたら、日向子さんの漫画作品が5冊も並んでいるじゃありませんか。どうせいつかは買うものとまとめて大人買いしたのですが、これが大正解。面白くてあっという間にみんな読んでしまいました。

どの話も気が利いていて深みがあって、それでいて話を描き過ぎない。特別絵が上手いわけではないと思うのだけど、例えば「美女」で隠居が絵の世界を覗くシーンなど思わずぞくっとさせられるし、他にも「離魂病」のお栄の手にしたガラス球の中の金魚がタライに移っているコマのような、なんでもないシーンで使うちょっと意外な構図があったり、浮世絵を下地にしたようなシーンがあったりして楽しかったりする。
どの話もいいけど、「野分」「美女」「離魂病」「鬼」あたりが白眉じゃなかろか。

これ、NHKあたりで45分くらいの時代劇にしたら絶対面白いですよ。

イチ
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by clemenskrauss | 2008-01-03 22:57 | 積読日誌
大江戸美味草紙
NHKの「コメディお江戸でござる」が好きでした。なにもえなりかずきファンなわけでもなく、ドタバタ喜劇はそれはそれで面白いけれど、お目当ては番組後半の杉浦日向子さんのお話。前半のコメディを時代考証の観点から突っ込みを入れたり、江戸の人々の暮らしぶりを教えてくれたり、最期までどこか硬さが残っていたけれど、生きた江戸の風俗を面白く聞かせてくれました。話の端々に、お酒好きらしさがちらほらと見え隠れしていて、見ていて親近感を覚えたものでした。

この本は僕が手にした杉浦日向子さんの著作の2冊目で、花のお江戸の人々の生活を食の観点から解説した本。当時の食を扱った川柳をキーに文章が綴られていて、これがまた面白い。例えば、


  おそろしきものの食いたき冬の空


これ、なんだと思いますか?冬が旬の恐ろしいもの。河豚。
誰だって死にたかぁない。でも食いたい。まだ河豚のどこに毒があるかも解っていなかったそうで、たまに当たるので「てつぽう」なんて呼ばれていた時代。


  死ぬなかと雪の夕べにさげて行き


独り者同士、一杯やろうと雪の中さげて行くのはもちろん河豚。おっかない、食いたかぁないなんて意気地のないことは言いっこなし。


  片棒を担ぐゆうべのふぐ仲間


運悪く、当たってしまったらハイさようなら。丸い棺桶を運ぶのはゆうべのふぐ仲間たちと言うわけだ。

徹底的に死を嫌忌して人の目から隠し切ってしまい、小学生なんかが「人は死んでも生き返ることもある」なんて答えてしまう今の世の中。死は生の延長線上にあるものという当たり前のことが、感じにくくなってしまった現代とは違い、江戸の人たちにとって死は日常のひとコマだった。
生と死とが隣り合わせと言うことを実感として解っている人でなければ、絶対に詠めないようなこの軽妙さが面白く思われました。

イチ
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by clemenskrauss | 2006-01-10 23:47 | 積読日誌